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現代ビジネス 2021年10月27日
萩生田が怒った!
「うちの党は何を考えているんですかね!」
衆院選の真っ只中。街頭演説の場で公然と党幹部を批判するのは自民党の萩生田光一経産大臣。言わずと知れた安倍元首相の側近で、岸田内閣ではこれまでの文科大臣から経産大臣へと「出世」した実力議員である。東京都連では総務会長を務める「都連幹部」の一人である。
萩生田が怒っているのは東京15区についてだ。
小選挙区は289あるが、公明党の候補者が出る9つを除いた280選挙区のうち、自民党が公認候補を立てなかったのは3つ。銀座クラブ通いで離党して無所属で出る松本純の神奈川2区と田野瀬太道の奈良3区。そして、残る1つの東京15区では『2人の候補に推薦を出す』という異例の対応を取ったのだ。
その2人の候補とは柿沢未途と今村洋史だ。
「うちの党はなにを考えているのか」…
「東京都連は15区に元職で15年に自民党に入党している今村さんを公認することを決め、10月8日には党本部に書類を提出した。11日の一次公認には間に合わなかっただけで、二次公認では発表されるものだと信じて疑いませんでした。自民党は基本的に地元が主導して候補者を決めるからです。
ところが、都連で決まった後に党本部がいきなり柿沢さんを入れ込んできた。無所属とはいえ、ついこの間まで立憲民主党の会派で活動していた人を推薦するなんて理解できません。執行部もさすがに公認はやりすぎだと思って推薦にとどめたのでしょうが、この決定には到底納得できない」(都連関係者)
候補者が乱立する東京15区
10月21日の夜、江東区の門前仲町で行われた街頭演説にやってきた萩生田は執行部への不満をあらわにし、冒頭のセリフを口にしたのだった。
「江東区の皆さんには本当にわかりづらい選挙になってしまって申し訳ないと思っています。当の私たち、東京都連の幹部もよくわからない。だって、今村さんのこのタスキ、党で用意して、この前政見放送も一緒に撮ったんですよ!
そしたら前日になって『推薦だ』と。なんで推薦なんだろうなと思ったら、もう一人、この間まで自民党のことを散々批判していた人が一緒に推薦って、うちの党は何を考えているんですかね!」
「高校が一緒」って…
実際、今村のつけているタスキには赤文字で「公認」と印字されていたが、その部分が剥がされていた。今村陣営は「それどころか、『自民党公認』と書いたビラを11万枚も刷っていたのに全部無駄になった」と嘆く。
それにしてもなぜ柿沢が自民党推薦を得られたのか。
「柿沢さんは名門の麻布高校出身ですが、高校の先輩である谷垣禎一・元自民党総裁を頼ったんでしょう。昨年出した著書では谷垣さんに帯を書いてもらっていた。今回も谷垣さんを通じて有隣会(谷垣グループ)で代表世話人を務めている遠藤利明選対委員長に話を通したと言われています」(全国紙政治部記者)
谷垣は柿沢に送った応援動画で、「私も柿沢さんの将来を広げるということに少しでもお手伝いをして、また柿沢さんとスクラムを組んで歩んでいきたいと思っています」と語っている。
柿沢は選挙ビラでも谷垣との繋がりをアピールしている
こうした流れでの決定だけに、萩生田の怒りの矛先は選対委員長の遠藤に向けられている。
「江東区のことは江東区の人たちが決める、東京のことは東京の我々が決めるんですよ! 山形県の政治家(遠藤利明)に東京や江東区の何がわかるんですか! 私、なんでこうなったんだと文句言ったら、前の総裁(谷垣禎一)の後輩が相手の候補(柿沢未途)なんですって。『高校が一緒』ってなんの話してるんですか! そんなことで日本の政治を語ってどうするんだと思いますよ! 我々東京の自民党が推薦しているのは今村さんだけですよ!」
こんなことは許してはならない
実際、東京都連のホームページには他の公認候補と並んで「推薦」として今村の名前は載っているが、柿沢は存在しないことになっている。
事務所開きで決意を述べる柿沢
一方、柿沢は10月17日の事務所開きで、与党に入る決意を語った。
「首班指名で私は意を決して岸田文雄総裁の名前を書き、本会議場で一票を投じました。これにより無所属であった私ははっきりとした立場を内外に明らかにした。そのことを重く受け止めて頂き、いまの岸田総裁の執行部の先生方から大変前向きなお取り扱いをいただきました。
この衆議院選挙においても自由民主党から私を擁立するというお話もありました。しかしながら、東京都連で別の候補者が擁立をされ、公認決定されるという事態になりました。不徳の致すところだと思っています」
こうした柿沢の変節に怒りを示しているのは自民党都連だけではない。
10月16日、亀有駅で街頭演説に立った立憲民主党の枝野幸男代表はこう叫んだ。
演説後に記者団の質問に答える枝野代表
「選挙直前まで自民党とは違うもう一つの塊の中で、国会で仕事をされていた方が、選挙直前に自民党の側に行ってしまう。二大政治勢力の川のこっちからあっちへ行くというのは意味が違います。自民党がやってきた政府の問題があるからこそ野党勢力で4年間、国会で仕事をしてきたはずの人が、選挙直前に自民党側に行くというのはこの4年間仕事をしていなかったということに他ならない。こんなことは許してはならない」
有権者には理解されない
また、前回まで東京15区で自民党公認として柿沢と3度戦った秋元司も首をかしげる。
「正直言って今までの彼のとってきた言動からすると、我が党もなぜ彼を今回推薦したのか甚だ疑問が残る。東京都連も受け入れなかった方を党本部がいきなり推薦という形としておろしてきたのか。これまで自民党本部は筋の通らないことはしてこなかったが、今回はそれが著しく崩れた。なぜそんなことになったのか」
10月18日に突然不出馬会見を行った秋元司
秋元は無所属でも立候補する意思を表明していたが、公示前日に突如立候補を取りやめた。
「萩生田さんが説得したようです。これで都連は今村で一本化した。都連は柿沢を応援しないよう締め付けをしています」(前出・都連関係者)
江東区の自民党区議13人と江東区選出の山崎一輝都議は今村支持。一方、野党系会派の「民政クラブ」では立憲民主党所属の5人が井戸正枝支持、無所属のうち4人は柿沢支持。
「自民党区議でも水面下で柿沢に近づいている議員が数人いるのではないかという疑いがある。さらに公明党も水面下では柿沢支持だという声もあり、柿沢と一緒に公明議員が挨拶回りをしていたという目撃情報も出てきた」(前出・都連関係者)
こうした複雑な構造もあり、結果の読めない選挙戦が続いている。だが、一人しか選ばれない小選挙区制において、同じ政党から推薦を受ける候補者が2人も出ている状況は有権者には理解されないだろう。
自民党内で噴き出す「火種」
萩生田は演説でこうも語っている。
「『この選挙が終わったらきっちりけじめつけてやる』。そんな思いでこの戦いを進めているところであります。私は自民党の国会議員でありますが、正すべきは正していく。党内できちっとものを申し上げていく。その姿勢に一点の曇りもありません」
演説する萩生田大臣(左は山崎都議)
演説終了後に萩生田を直撃すると、「田舎者が選対委員長やっちゃダメなんだよ!」と斬り捨てた。
選挙後、自民党内で吹き出す火種は確実に生まれた。岸田政権の統治能力が問われる。
(敬称略、写真は筆者撮影)

































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